こんにちは、アッティです。
「アッティの熱湯とやま人」は、富山のために熱い気持ちを持って頑張る人の本音に迫る番組!
今回のゲストは、株式会社能作 代表取締役社長の能作 千春 (のうさく ちはる) さんです。※2022年11月の収録時は専務取締役
世界初の錫100%の曲がる食器やカゴまたは真鍮製の風鈴、そして産業観光の促進など、常に新しいことに挑戦し続ける鋳物メーカー能作の顔として大活躍の能作千春さんに熱く迫っていきます!
この記事は、FMとやま 金曜17:15~17:25放送のラジオ「アッティの熱湯とやま人」の編集前データを、ほぼノーカットでまとめたものです。
放送では流れなかった裏話も含め、お楽しみください。
能作へ入社するまで
能作千春さんの人柄
能作千春さんは、富山県で有名な「能作」の専務でありながら、社員からは「千春さん」「千春ちゃん」など親しみを込めて呼ばれています。
会社内ではフラットな雰囲気を重視し、デスクも入り口近くに配置するなど、社員との距離を縮める工夫もしています。
アッティ
能作さん、どうぞよろしくお願いします。
能作千春さん
よろしくお願いします。
アッティ
今や富山のお土産として、また産業観光の象徴として、「能作」を知らない方は富山県人ではいらっしゃらないと思いますけれども。
実はですね、この番組始まって8人目のゲストになるんですが、実は女性の方は初めてなんですよ。
能作千春さん
嬉しいですね。
アッティ
このジェンダー時代に、なぜそんなことをしてるんだ? って言われそうなんですけれども。
そういった意味では「女性の方も活躍していただく」その象徴として、今日お話を聞いていきたいと思っております。
千春さんというかですね、能作さんは普段、周りの方からどう呼ばれてるものなんですか?
能作千春さん
「千春さん」とか。職人さんからは「千春」とか「千春ちゃん」とか、下の名前で呼ばれることが多いです。
アッティ
呼び捨てもあるものなんですか?
能作千春さん
ありますあります。結構身近な感じで、皆さん感じていただけるんですよね。
アッティ
千春さん、千春ちゃん、千春みたいな。
能作千春さん
そうそう。
アッティ
なるほど。会社でも「専務」という肩書きでありながらも、皆さんそういう親しみをもって?
能作千春さん
もちろん中には「専務」って呼んでくださる方もいるんですけど、でも「呼び名は何でもいいかな」と思ってて。
アッティ
今回は「千春さん」ということで、お呼びしていってよろしいでしょうか?
能作千春さん
はい。
アッティ
柔らかい雰囲気を作るために「肩書きで呼ばない」とか、そういった会社さんって増えてらっしゃると思います。
前回のゲストであった新田知事も、要は「新田知事」って名前ではなくて「新田さんと呼んでください」みたいな話からされてらっしゃいました。
「千春さん」とか「千春ちゃん」って名前で社内で浸透していくと、雰囲気ってやっぱり変わってくるものですかね?
能作千春さん
私は社内の従業員との年齢もすごく近くて。うちは今、平均年齢が34歳とかなんですね。
アッティ
若いですね。
能作千春さん
私は今36になるんですけど、世代もすごく近いし、女性もすごく多いので、そういった意味では親しみをもってお仕事していくことが、なんかいろいろ繋がるっていうのもあって。
呼び名もそうですし、デスクもスタッフに囲まれた、もう本当に入口に一番近いところを自分の席にして (笑)
アッティ
珍しいですね、普通は逆ですよね。入口から一番遠いところ。
能作千春さん
普通そうですよね。
アッティ
そうすると、みんな入ってくると必ず千春さんの顔を見るみたいな、そんな感じになっているんですね?
能作千春さん
「みんなを見渡せる場所に自分のデスクを持ちたい」って思ったのと、あとは出入りが単純に多いっていうところ (笑)
アッティ
なるほどなるほど。「効率的に近いほうがいい」というところもあって。
能作千春さん
そうなんです、そうなんです。
アッティ
ちなみに社内で、千春さん以外の人たちも、下の名前で呼んだりしてるような感じなんですか?
能作千春さん
けっこう、それもありますね。役職名で呼ぶってことはあまりないです。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
フラットな感じです。
能作の簡単な紹介
能作は1916年創業で、106年の歴史を持つ企業です (2022年時点)。
もともとは仏具や茶道具、高岡銅器を扱っていましたが、2003年から錫製品に注力し、テーブルウェアやインテリアを自社ブランドとして展開。現在はオンラインや海外販路も拡大し、製品の魅力を広めています。
アッティ
富山ではね、本当に有名な会社さんでいらっしゃいますけれども、このラジオは全国にもとどろいておりますので、株式会社能作さんの簡単なご紹介いただけますでしょうか?
能作千春さん
創業が1916年で、今年106年の歴史がある会社なんですけれども (2022年時点)。
もともとは仏具とか、茶道具とか花瓶ですね、高岡銅器の産業ということで、真鍮 (しんちゅう) 製品を主に扱ってきました。
2003年から「錫 (すず)」っていう金属に目をつけて、錫製のテーブルウェアやインテリアっていうのを、自社ブランドとして直接ユーザーの手元に届けるという店舗展開であったり、オンラインサイトであったり、あとは海外販路もそうなんですけれども、幅を広げながら製品の魅力を伝え販売をしているっていうような、ざっくりとそういった事業展開をしています。
アッティ
106年なんですね!?
能作千春さん
そうなんですよ。
アッティ
100年を超える企業で。
能作千春さん
100年。私の父が現在の代表 (2022年当時) なんですけど、今4代目なので私の代で5代目になる歴史があります。
アッティ
高岡銅器がメインだったところから、最近では「錫」の方にも力を入れて、いろんな産業・観光含めて行われているということですよね?
能作千春さん
はい。
家業へのイメージ
能作千春さんは、幼少期を鋳物工場で過ごし、父親が仕事に没頭する姿を見てきました。
しかし、鋳物工場の環境が「きつい、汚い、危険」であり、男性中心だったため、「会社を継ぎたい」という気持ちは全くなく、女性が働ける環境とも思っていませんでした。
アッティ
お父様が社長でいらっしゃって、当然あとを継ぐかどうかはちょっと置いといてですけれども、最初から能作さんに入ろうという気持ちはあったものなんですか?
能作千春さん
いやそれがですね、小さい頃から鋳物工場を遊び場にしてきて。父親は朝5時から、もう夜は本当に日を超えるぐらいまで鋳物と格闘するような毎日で。
お仕事がすごく好きで、鋳物の職人として18年間歩んできた人だったので、ほとんど家にいる時間がないわけですよ。365日職場にいる。
休みになると私を車に乗せて一緒に連れてってくれるので、工場で遊んでる、みたいな幼少期を過ごしまして。
アッティ
休みの日にも工場に行って、一緒に遊んでるみたいな? お父さんは仕事されてるんでしょうけどもね。
能作千春さん
工場を見ていて、当時は小学生とか保育園児だった頃の私から見ると「おじいちゃんがお仕事をしている」。当時は平均年齢50代とか60代が職人の中心だったので。そして、男性しかいない。
あと、鋳物って「きつい、汚い、危険」って呼ばれる。今でもそう呼ばれる業種ではあるんですけれども、当時の私の印象がやっぱりそのままで「臭いとか、汚い」とか。
作っているものも、当時作ってた仏具や茶道具っていうのは、今だからこそ私は魅力がわかるんですけど、当時はこれが何なのかもわかんなくって。
「あとを継ぎたい」とか、「会社に入りたい」っていう気はサラサラなく。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
まして、女性が働ける環境とも思っていなかったですね。
アパレル通販誌の編集者時代
能作千春さんは、富山を離れて神戸の大学に進学し、キャリアウーマンを目指してアパレル女性通販誌の編集者として3年間勤務しました。
編集者として、物の見せ方や売り方にこだわりを持って働いた経験は、現在の仕事にも役立っています。
アッティ
そうすると、能作に入る前はどういうことをされていたんですか?
能作千春さん
富山を離れて神戸の大学に行ったんですけれども、女性として「キャリアウーマンになりたい」っていう思いがあって。
父親の働く姿自体は「すごくかっこいいな」と思って、「仕事ってきっと楽しいものだな」って。
鋳物の仕事はしないけど、でもキラキラした仕事。父親のように「楽しい」って思える仕事を見つけたいと思って、いろいろと就きたい業種を探したんですが、その中でアパレル女性通販誌の編集者として採用いただいて。3年間勤務させていただきました。
アッティ
編集をされてたんですね。
能作千春さん
そうですね、編集者でしたね。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
これが今の私に、実はすごい役立ってるっていうのはあって。
単なるアパレルの雑誌じゃなくって通販誌だったので、「どうやって物をよく見せて、どうやって物を売っていくか」っていう企画だったり見せ方っていうところに、とことんこだわりを持って編集していたっていう記憶があります。
アッティ
そのときはバリバリのキャリアウーマンでいらっしゃったわけですね?
能作千春さん
そうですね。「編集長になりたい!」っていうくらい。
仕事が楽しくてしょうがなかった時代です。
能作へ入社するきっかけ
能作千春さんは、父親が開発した錫製品が、前職のアパレル通販誌の職場で話題になったことをきっかけに家業に興味を持ちました。
工場を訪れた際に職人たちが楽しそうに働いている姿を見て、「能作」に対するイメージが変わり、最終的に入社を決意します。
アッティ
なぜご自身が、3K (きつい、汚い、危険) で男性しかいないし、年配のおじちゃんしかいないしみたいな雰囲気を持っていて「絶対ここでは働きたくない」と思っていた能作に入社しようと思ったんですか?
能作千春さん
私は前職でアパレル系だったので、すごいおしゃれな先輩が多かったんですよ。
すごく憧れの先輩が1人おりまして、その先輩がある日「こんな製品を見つけたんやけど、すごいおしゃれじゃない?」って言って社内に持ってきて、先輩が何人か集まって話をしてるところに遭遇したんですよ。
パッて見たら、本当にもう冗談でもなく、当時私の父親が開発した錫製品。まだ世の中に当社の錫製品が出回っていない本当に初期の頃なんですけど、「三ノ宮の雑貨屋さんで見つけたんよ」っていうことをおっしゃっていて。
私は「能作」っていう会社が家業であることを特に言わずに入社をしてた、っていうのもあって。
アッティ
同僚の方は、それがまさか千春さんのところだってのは知らずに当然話してたんですよね?
能作千春さん
知らずに話をしてたんですよ! それ見た瞬間に「あっ!これ実はね」っていう話にはなったんですけど。
「私の父親が…」って盛り上がって、ちょっと興味を持つようになって。その三ノ宮の雑貨屋さんに、実際足を運んで見に行ったんですよね。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
そしたら3点、その当時作ってた製品が棚の中には並んでて、小さなポップなんですけど「能作」っていう、ちゃんと社名もあって「富山の職人が手作りで作ってます」っていうのを見たんですよ。
それ見たときに、単純に今まで「絶対に働きたくない」って思ってた家業だけど、「今どういうふうになってるんだろう?」と思って、ちょっとずつ興味を持つようになり。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
有給休暇を使ってちょっと帰ってみたんです。
そしたら、たまたま工場の中で職人さんたちがバーベキューをやっていて、そこに招いてくれたんですよ。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
皆さんめちゃくちゃ楽しそうに、いきいきと仕事の話をしていて、「私が思い描いてた工場と変わってきてるな」って。
職人さんたちすごい楽しそうだし、「物作りがめちゃくちゃ楽しいのかもしれない」と思って。そこから半年後に入社をすることを決意しました。
アッティ
そのときは、それまでもそうですけど、現社長のお父さんから「うちに来ないか?」とか「あと継がないか?」みたいな話は全くなかったんですか?
能作千春さん
それがですね、一切なくて (笑)
アッティ
最終的に、千春さん自身が「入りたい」って話をされたんですか?
能作千春さん
そうなんですよ。私興味を持ちだしたらとことん興味を持ってですね。
前職のお仕事をしながら「実はね、うちの仕事でこういうの作ってるんですよ」みたいな、半ばもう営業みたいになってきてて。
先輩たちも「いやいや、あんた、どれだけ好きなんよ」って。「それだけ熱く語るんだったら、能作に帰った方がきっと幸せになると思うよ」と徐々に言い始めてたので。
アッティ
周りの人も言い始めて。
能作千春さん
当時の先輩や編集長と今でもすごく仲が良くって、この前もお食事に行ったんです。
そしたら「今やから言うけど、実は陰で、みんなで千春をどうやって富山に帰そうか? っていう話をしてたのよ」って。
アッティ
それがなくとも、「自分でもう帰ります」というかね、「入社します」みたいになったわけですね、素晴らしい。
お父さん、そのとき反応はどうでした?
能作千春さん
「そうなんや」って言って、「自分で決めたんやったら応援するよ」って言って。
けっこう、何て言うんでしょう、「さっぱりしてるな」と思ったんですけど。あとあと聞いたら、めちゃくちゃ嬉しかったみたいで。
アッティ
なるほど、いいお話ですね。ありがとうございます。
それでは今回は以上とさせていただきまして、次回は能作に入社したあとのことと、専務として活躍されていること、また、女性活躍についても少しお話をいただきたいと思っております。
能作に入社してから
入社当時の状況
能作千春さんが入社した12年前、能作は従業員25名で、女性は3名だけでした。
小さい頃の印象とは異なり、錫製品が認知され始め東京に初店舗ができた時期で忙しく、がむしゃらな状況。現場での研修後は、受注や生産管理など、多岐にわたる業務に追われる毎日でした。
職場は男性中心で年齢層も高めでしたが、少しずつ若い人が増えて変化が見られていました。
アッティ
前回は、なぜ能作さんに入られたのか、またそのきっかけについてお話をいただきましたけども、実際に能作に入ってみてどうでしたか?
能作千春さん
私が入社したのは今から12年前なんですけど、当時は従業員数でいうと25名ぐらいだったんですね。女性は、私を含めて3名しかいなかった。
アッティ
少なかったんですね。
能作千春さん
年齢も、もちろん私が一番最年少っていう感じでした。
でも小さな頃に感じてたような、おじいちゃんおばあちゃんみたいな「おじいちゃんの世界」みたいな感じではなかったんです。
当社の錫製品がちょっとずつ認知され始めていた状態で、東京に1店舗目のお店がようやくできた、っていうタイミングで入社をしたんですね。
なので、もう忙しくて。ありがたいことに、商品の出荷が追いつかない。もの作りの方も追いつかないっていうので、なんせもう、がむしゃらだった。
アッティ
最初からバタバタな状態で入ったわけですね。
能作千春さん
バタバタな状態でした。
アッティ
いきなり何も知らない新人が入ってきて手取り足取り教えてもらうっていう、そういう段階ではなく?
能作千春さん
時間がなくて。それでも「もの作りについてはちゃんと学ばないといけない」と思って。4~5ヶ月ぐらい研修として職人の横について、現場で製造について学ばせていただいたんです。
でも、もう現場に入っている時間すらもなくなってきて。受注、生産管理、発送など、そういった物を売るための仕事をどんどんやらないといけないような状況でした。
アッティ
初期に抱いてらっしゃった3Kであったりとか、年配の人が多いであったりとか、男性だらけだってイメージは、そのとき全く違ってたものですか?
能作千春さん
でもその当時、まだ12年前はやっぱり男性が中心。今、実は、平均年齢34歳なんですけど。
アッティ
一気に若くなっていますよね。
能作千春さん
当時は今みたいにそこまで年齢は低くはなく、少しずつ変わってるけど、でもまだ完全に印象は変わりきってない。そんな状況ですかね。
専務としての仕事内容
能作千春さんは、入社当初、基礎的な業務改善に取り組みます。受注管理や発送場の整備、在庫管理などを整え、会社の成長を支えました。専務としては、前職の経験を活かしながら、ブランドの認知向上に努めます。
その後、結婚・出産の経験を経て、スタッフやお客様、国内外を繋ぐ役割をさらに大切にするようになりました。
アッティ
入社をされたのは、急成長してるときで、かなりバタバタされてる状況のときだと思います。
そこの中心人物として動き始めて、今はもう専務取締役になられてますけれども、どういう遍歴をもってして会社が大きく変わってこられたものなんですか?
能作千春さん
私自身がやってきたこととしては、例えば、前職を通してパソコンスキルであったりだとか、ある程度の業務ができるようになってたっていうのもあって、受注書とか発注書の管理の仕方とか。
発送も当時は、商品を梱包して箱に詰めてみたいなのを各自デスクで、社長自身もバーッとやってるような状態だったので、発送場を作ろうと。
アッティ
バタついてしまってて、その考えすら、もうみんなの中で出ていなかったわけですね。
能作千春さん
あとは本当に、在庫を数える時間もないくらい毎日忙しくて。
当時は、物が足りなくなってきたら、現場に走っていって「職人さん、これ作って」みたいな状態でした。それを週に1回在庫を数えて、「これが足りないから、この個数を作ろう」っていうのを逆算してちゃんと計算をするみたいな。
企業としては当たり前のことかもしれないですけど、そういった基礎みたいなところを作るところに携わらせていただいて。
今考えても、あのとき私が入って、少しは役に立てたのかなって思います。
アッティ
それを経て、今、千春さんは前職の経験も活かしながらであると思うんですが、メディアもそうですし、販促的なことを含めて大活躍されてる状況になってると思います。
能作自身のブランドも、世の中で認知がどんどん高まっているかと思いますけれども、今、専務になられて何年経つんでしたっけ?
能作千春さん
そうですね、何年だろう? 5~6年ぐらいですかね?
アッティ
ある意味、経営の中心の1人として、トップリーダーとして能作を引っ張る役割を担ってみて、実際どうですかね?
能作千春さん
今は、それこそいろんなことをやらせていただいてるんですけど、やっぱりここに来るまでというか、途中お仕事が楽しくて楽しくてしょうがなくていろんなやりたいことがある中で、実は、結婚・出産をして途中で中抜けをしてるんですよ。
その期間っていうのが、今思えばですね、結構大きな一大事。でもそれがあったからこそ、今の私のお仕事もそうですし、スタッフとの向き合い方も、大きく変わってきたっていうのがありますね。
アッティ
専務として大切にされてることって、何かありますか?
能作千春さん
今、私が大切にしているのは、「父親が社長である」「私はスタッフと年齢が近い」、だから「繋ぎ役」でいること。
スタッフの繋ぎ役でいることもそうですし、お客様との架け橋になるっていうのもそうですし、今は海外にお店があったりもするので、海外と国内を繋ぐっていうのもそうですし、私自身の役目としては「繋ぐ役目」だと思っています。
父である社長との役割分担
能作千春さんは、父親である社長と役割分担をうまく行っています。父親は物作りとデザインが得意で、千春さんはマーケットニーズを収集して製品を売ることが得意です。
親子でありながらも意見が一致しやすく、ケンカもなく良好な関係で仕事をしています。
アッティ
社長と具体的に話をされたかはわかりませんけれども、たぶん役割っていうのをうまく分担されてるってことなんでしょうね。
能作千春さん
そうですね、私の父親、社長は、物を作るっていう才能が本当にすさまじくすごくて。
デザインの知識もあるし、経験もあるし、作りたいものへの情熱っていうのがすごいので、プロダクトアウト型。
アッティ
なるほどなるほど。
能作千春さん
私は職人としての経験があまりない。4~5ヶ月しか経験がないので、もうほとんどないといっても過言じゃないぐらい。
なので、どちらかというとマーケットのニーズを拾いながら、製品に活かしていったり、スタッフの声を拾っていったりっていうような意見収集型なんです。あとは「物を売る」っていうところがすごく得意っていうのもあって。
そういった意味では「父親が物を作る、作ったものを売る仕掛けを私が考える」みたいな、阿吽の呼吸? 暗黙の役割分担? っていうのができてるかな、っていうのは思います。
アッティ
それが無理やりではなく、「得意としてるとこが、たまたまそれぞれ違ってた」っていうところがいいですよね。
能作千春さん
そうですね。
アッティ
それが活きてますよね、間違いなく。
でも、社長と専務としてのっていうのは何かわかるんですけれども、親子として一緒に仕事するわけじゃないですか? そこらへんってどういうものなんですか?
能作千春さん
うちの親子関係はけっこう変わってるのかもしれないんですけど、私は小さい頃から父親に対して反抗しようと思ったこともなければ、反抗期がなかったんですよ、とりあえず。
そして、父親も何かすごく私に対しての信頼度が厚いというか、なんか自分で言うのもあれなんですけど似てるんですよね。親子で考え方だったり、目指す方向だったり。
ひとつのものを考えるにしても、やり方は2人とも違うんですけど行き着く先は一緒で。結果「考えてること一緒やね」みたいな話を、2人でよくします。
だから、何か特に大きな衝突をするっていうことなく、プライベートもそうですし、お仕事もそうなんですけど、何も関係が変わらないままやってこれてるっていうのが。
アッティ
ケンカするようなことも、ほとんどないんですか?
能作千春さん
お仕事の面では、もちろん意見を言ったり、それに対して社長も想いを言ったりっていうので、でもそれはケンカとか衝突ではないなという。
お仕事を一緒にやっていく上での意見の出し合いだと思っているので、何かそういった意味では「ケンカ」っていうのはないですね。
アッティ
いい関係ですね。父・娘としての関係もある意味いいですし、社長・専務としてもいい形になってますよね、役割としては。
能作千春さん
そうですね、あんまりない形なのかなとは思います。すごくいい関係でお仕事もさせていただいてるなと。
従業員の74%が女性
能作は、従業員の74%が女性。特に意図して採用したわけではなく、適材適所の人材採用の結果そうなりました。
女性が活躍しやすい環境を整え、育休・産休制度を導入し、職場環境を改善。顧客の多くも女性で、女性視点でのサービス提供が重視されています。
アッティ
結婚されて出産もされて、そうすることによって「他のスタッフの方々の気持ちがわかる」って話があったと思うんですけれども。
そういう意味で、女性が非常に多いという話をお聞きしましたが、今何割ぐらい女性がいらっしゃるんですか?
能作千春さん
今、全従業員の74%が女性 (笑)。この前計算してみたら、74%だったんですよ。
アッティ
最初、入社したとき3人っておっしゃられていませんでした?
能作千春さん
年々、数が増えてきて。「意図して女性を採用したい」とか、そういったことは一切なく。
採用するときに性別とか本当に全く気にせず「この方を活かせるところはどこだろう?」とか、そういった「人を見て採用する」っていうことを心がけてるんですけれども、結果としてすごい女性が増えたっていう。
アッティ
「実は職場としては、女性も働ける職場でもある」ということなんですかね?
能作千春さん
そうですね。あとは今、実際に店舗をどんどん増やしていくと、販売員のスタッフは女性が多かったり。
うちは従業員の割合的に普通の製造業と変わってるな、おかしいなと思うんですけど、従業員は170人いるんですけど、職人と呼ばれる人間は40人しかいないんですよ。
残りのスタッフは、販売に携わっていたり、商品を企画したり、PRしたり、広報したり、マーケティングしたり、そういったところの人がすごく厚いんですよね。
だからそこらへんは、けっこう女性がバリバリと、今、活躍しています。
アッティ
世間では「女性活躍社会」ってことを言われ始めていて、育休の問題であったりとか、女性が働きやすい環境作りがどんどん進んでいます。
能作において、そういう活動ってされているものなんですか?
能作千春さん
育休や産休などの制度は、私が入社した当時はしっかりと制度としてなかったものを作り上げるところから。
私自身が、初めての育休を取った人間だったりするので。
アッティ
そうですよね。
能作千春さん
あとは職人でも、女性の方が増えてきたっていうのもあって、今の社屋は男女の更衣室はちゃんと半々のサイズであったりだとか。
あとは、お手洗いにはちゃんとオムツ交換台を設置していたり、キッズコーナーを設けていたりとか。
女性視点でお客様をおもてなしする方法、っていうのも考えています。
アッティ
なるほど、女性目線で見ないとわからないことだらけでしょうしね。
今のお仕事が拡大していけばしていくほど、たぶん女性が活躍しやすい場が多くなるような気がしますよね。
能作千春さん
うちの顧客さんは、けっこう男性女性問わずファンでいてくださる方が多いんです。
中でもコアなのが女性客。特に祝い事で記念品として商品を購入いただくケースが多いので、贈答品としてってなると、30代40代の女性っていうのがすごくキーになってくるんですよね。
アッティ
まさに同世代ですもんね。
能作千春さん
同世代です。私自身でもあるし、今の弊社が抱えているスタッフたちも、その世代の女性が多いっていうところで、すごく声は拾いやすいですね。
アッティ
なるほど、ありがとうございます。
それでは今回は以上とさせていただきまして、次回は、特に最近力を入れてらっしゃいます産業観光について、また錫婚式 (すずこんしき) という新しい取り組みについて、そういったことについてお聞きしていきたいと思っております。
能作と産業観光
高岡の産業観光の成功
能作は高岡の産業観光の中心であり、職人技術や歴史を伝える工場見学や体験工房、カフェを提供。
工場見学やイベントで興味を引くことで、県外からの観光客も多く訪れ、産業観光を成功させています。
アッティ
前回は、女性活躍のこと、専務になってどうだということ、そういうお話をしてもらったんですが、ここからはどちらかというとここ最近の動きを聞きたいなと思っております。
特に高岡において、銅であったり錫であったり、そういったものを利用した産業観光がかなり促進されてるイメージがあります。
その中心を担ってらっしゃる能作として、その産業観光に対する想い、そしてまたどういうことをおこなってらっしゃるのか、そんなことについてお話いただけますか?
能作千春さん
今おこなっている産業観光っていうのは、弊社の製品の魅力だけではなく、その背景には400年続く高岡の産業の歴史があって、そして職人の技術があって、あとは例えばデザイナーさんの想いがあって、伝えたいことがたくさんあるんですよ。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
もちろん店頭で、それを接客を通して伝えるっていうことも大事だと思ってるんです。
でも「間近で職人の姿を見ていただく」っていうのが、一番手っ取り早く、お客様にその魅力をお伝えすることができるし、感じ取っていただくことができるんじゃないかなと思ってまして。
昔から、工場見学っていうのは大事にしてきたんですね。
アッティ
なるほどなるほど。
能作千春さん
その中でたまたま「工場のキャパをもう少し広げていこう」「大きくしよう」っていう話が持ち上がって、工場を移転するっていうことになったんです。
移転をするならば、「魅せる工場を作りたい!」「産業観光に特化した工場にしよう!」っていうことを、社長とともに決定をしました。
そこで、「産業観光を、千春がやれ!」と社長からお題をいただきまして。
アッティ
「お前やれ」だったんですね!?
能作千春さん
そうそう。
アッティ
「俺がやる」じゃなくて。
能作千春さん
当時私は、今の下の子がお腹にいるような状態で。
アッティ
そのときにそのお題が。
能作千春さん
そうなんですよ。
アッティ
大変だ。
能作千春さん
なので、下の子は3ヶ月ぐらいで保育園に預けて、そこから産業観光の立ち上げっていうところでひた走ったんです。
でもやっぱり「どうやったらお客様に伝えられるだろう」と。
工場見学はもちろんですが、実際に職人と同じ技法でもの作りが体感できる「体験工房」を作ろう。そして飲食を通して、錫の魅力を伝えたいっていうので、錫の器でお食事を楽しめるカフェを併設しようとか。
あとは、県内にはたくさん楽しいところや飲食店や、お宿があったりするので、その情報発信をしていこうとか。そういった産業観光の核となるところっていうのを、いろいろ企画を進めていきまして。
さらに、その施設自体を知っていただかないといけないっていうので、オープンしたのが2017年なんですけれども、約3年ぐらいはもう本当にすごく頻繁にイベントを行いました。
鋳物に興味がない人でも「鋳物って何だろう?」って、まずは興味を持っていただくきっかけ作りとして、工場の中で音楽イベントをやったり。
アッティ
工場の中でですか?
能作千春さん
工場の中でやるんですよ。
アッティ
喫茶店とかじゃなくて、工場の中でやるんですか? すごい!
能作千春さん
私が当時「工場の中って、暗いよな、汚いよな、危険だよな」みたいな何かそういった工場が、音とライティングがあると、めちゃくちゃクールでかっこよくて、若い人たちが「おしゃれ!」って言うんですよ。
見せ方ひとつだなと思うんですけれども、工場の中で、例えばファッションショーをやってみたりだとか、地域の方をお招きしてキャラクターショーをやったりだとか。そういった活動を、もう3年間がむしゃらにやってきました。
実は初年度10万人の方が来場されて、次年度に11万人、3年目になると13万人の方が、県外からも多くお越しになられまして。
今は約7割から8割ぐらいが、県外から観光でお越しになる方が中心になっています。
職人の意識向上のワケ
工場見学や共同制作が職人のモチベーション向上に繋がり、工場内の清潔さも向上。
また、職人がイベントでお客様と直接触れ合うことで、顧客の声を聞きやすくなり、顧客第一の意識が高まりました。
アッティ
体験もできますし、作ってるところを見ることもできるってなると、見る側は非常に興味が湧き身近に感じると思います。
一方「見られる」であったりとか「一緒に作る」であったりっていうのは、実際働いてる側からしても違うものなんですかね?
能作千春さん
「人に見ていただく」っていうことになると、「意識がすごく大きく変わったな」と思っています。
例えば、工場の中は、経営者が何も言わなくても、職人たちが皆さんですごくきれいに保っていただけていて。
アッティ
そうか、見られてますからね。
能作千春さん
そうなんです。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
「見られること」っていうのがモチベーションに繋がる職人さんもたくさんいて、マルシェイベントとかでは、あえて職人さんにもどんどん前に出ていってもらって、実際にお客様に実演販売をしたりだとか。
アッティ
すごいですね。
能作千春さん
販売に携わっていただいたり、あるいはカステラを焼いたり、わた菓子を作ったりっていうような。
アッティ
普段の仕事と全く違うこともやって。
能作千春さん
そうなんです。職人さんとか販売員とかもう全然関係なく、希望者を募って毎回やってるんですよ。
お客様と実際に触れ合えるって、すごく重要だと思うんですよね。
アッティ
いろんなメーカーさんが富山にはたくさんありますけれども、「お客さんの声が届かない」。そのことによって「お客様第一になれない」みたいなところって結構あると思います。
でも、そうやって密接になると、明らかに「お客さんを第一に考えよう」って意識を持つようになるでしょうね。
能作千春さん
お客様の声もすごく拾いやすいですし、お客様の反応も見やすいです。
「人と人とが繋がれる環境が身近にある」っていうのは、すごく良いことかなとは思います。
産業観光の奥深さ
能作はあくまでメーカーであり、産業観光は広報活動の一環として行なっています。
職人の技術と錫製品の魅力を知ってもらうために産業観光を活用し、観光や飲食を通じて製品の認知度を向上。高岡の他の産業とも連携し、地域全体の発展にも貢献しています。
アッティ
今は会社としてはどうなんですか? メーカーなんですか? 産業観光なんですか?
能作千春さん
メーカーですよ。
アッティ
一応メーカーなんですか?
能作千春さん
私がよく言うのは「私達がやってるのはあくまで産業観光で、観光業ではない」
アッティ
観光業ではない?
能作千春さん
単なる飲食店じゃなくって、錫を見せるための飲食店。
アッティ
なるほど。
能作千春さん
メーカーだからこそ、職人の技術があるからこそ、そして錫を作ってるからこそできてることっていうのが、産業観光に繋がっているので。
どちらかというと、イメージとしては「めっちゃ体を張った広報活動」だと思います。
アッティ
なるほど、わかりやすいですね。
中心はあくまでも銅であったり錫であったり、作ることだと。
それを波及させるために周りにいろんなものがあるし、波及されてるモノがより活きるからこそ、作るところもより成長するみたいな。
能作千春さん
そうなんです。知るきっかけをたくさん作ることっていう。
そのきっかけ作りを産業観光を通して、観光入口でも飲食入口でも何入口でもいいんです。まず知っていただかないと、その先に繋がらないと思っているので、認知させることの重要性っていうのは感じますね。
アッティ
私も新社屋の方は、何度かお邪魔させていただきました。
変な言い方ですけど、単体であそこにお邪魔をさせてもらうと、もう本当に素晴らしさを感じるんですね。錫の素晴らしさであるとか、高岡の産業自身の素晴らしさであるとか。
あの社屋だけでなく、能作さんと周りの高岡の同じ産業あるじゃないですか? そこの連動性って、今どうなってるものなんですか?
能作千春さん
コラボして商品を製造したりだとか、もちろん産業としての繋がりもありますし、コミュニティもあります。
そういった同業さんもそうですし、産業観光をやる中で、他業種さんとの繋がりをより強く持てるようになりました。
アッティ
いいですね。会社の発展だけでなく、まさに求めていた「高岡の発展」みたいなところに繋がっていますよね。
能作千春さん
得られるものも大きいですし、点と点を結んで面にするっていう意味で、産業観光って本当に奥が深いんですよ。
アッティ
なるほど、期待できます。
錫婚式の取り組み
能作では、10周年記念の「錫婚式」というセレモニーを開催しています。錫婚式はもともとイギリスで始まり、10年目の結婚記念日を祝うものです。
錫を使ったオリジナルのセレモニーを提供し、家族でフルコースの料理を楽しみ、記念品を作る体験を提供。参加者の多くは県外からの旅行者で、錫婚式をアトラクションのように楽しんでいます。
アッティ
最近、新しい事業として「錫婚式 (すずこんしき)」というのをやられてるってお聞きしたんですけれども、これってどういったことなんですか?
能作千春さん
金婚式とか銀婚式っていうのは、結婚50年目や、25年目のアニバーサリーということで、皆さんご存知の方多いと思います。
実は10周年って、「錫婚式」って呼ばれてるんですよ。
アッティ
10周年。
能作千春さん
10周年の結婚記念日をお祝いすること。
アッティ
もともと呼ばれてたんですか?
能作千春さん
イギリスから始まって、錫婚式っていうのは、一応全世界で辞書にも載ってるぐらいなんです。
アッティ
能作が作ったわけじゃなくて、もともとある言葉なんですね? 知らなかったです。
能作千春さん
うちは錫のメーカーですので、商品を買いに来る方とか観光に来られる方の声に、産業観光でずっと耳を傾けていたんです。
すると、年に5組から10組ぐらいの方が「私達、錫婚式だから来ました」とか、「錫婚式で商品を送り合いたいんです」っていう声があることに気づいて。
アッティ
日本人で?
能作千春さん
はい。錫婚式って知ってる方はご存知で、「その節目で、うちを利用していただけるのはすごくありがたいな」と、錫婚式に興味を持つようになってきて。
セレモニーを考えた当時、私自身は (結婚)7周年目だったんですけれども、「結婚10周年の人って何がやりたいだろう?」って考えたときに「家族でみんなで祝えるセレモニーがあったらいいな」と思って。
「式として、錫婚式を能作でできたらめちゃくちゃ楽しいんじゃないかな」と思って企画をして、2019年に始めた事業なんです。
内容としては、オリジナルのセレモニー。そのセレモニーには錫をたくさん使うんですよ。
セレモニーが終わったら、ご家族で錫の器を使ってフルコースの料理を食べて。
アッティ
それもついているんですね。なるほど。
能作千春さん
そして家族で、錫の製品を記念品として作るものづくりを行って。
アッティ
そうなんですね。
能作千春さん
衣装も着れるし、メイクもできるし、通常の結婚式と同じようにウェディングドレスや打掛を着て参加でき、写真も残していただけるっていうので、今は月にそうですね、5件とか…。
アッティ
結構ありますね。
能作千春さん
5件から7件ぐらい予約をいただいてたりだとか、お問い合わせもすごく増えています。
結婚式は、外向けに発信する儀式。でも錫婚式は、ご家族だけで、ご家族の内側に向けて想いを深め合う、絆を深めるセレモニーだと思っていて。
お越しになられる方は、大体ファミリーだけで来られますね。
アッティ
それは大体皆さん、10周年で行われるものなんですか?
能作千春さん
そうですね、皆さん結婚10周年という節目でご利用になられます。
アッティ
「錫をいろんなとこに使っていて」って話がありましたけど、どういったとこに使われるんですか?
能作千春さん
例えばセレモニーの最初の儀式は、旦那様が奥様に10本のお花を束ねていて、1年、2年って想いをかみしめながら、最後に錫の花どめで束ねて奥様にプレゼントするっていうところから始まって。
そして誓いの誓約書って結婚式でもあると思うんですけど、錫婚式の場合は、錫って柔らかくて刻印を打つことができるので「誓い刻印」っていう儀式をやったり。
アッティ
なるほど、すごいですね!
能作千春さん
錫をいたるところに散りばめていて、製品にも触れられる。
そして、錫の意味合いっていうのが「朽ちない、錆びない、使えば使うほどに味わいが出て、すごくしなやかな夫婦の関係」っていうところになぞらえて錫婚式っていうのがあるので、そういった関係性を願ったセレモニーでもあります。
アッティ
なるほど、いいですね。ましてや内部向け、家族向けにやるっていうのがなおさらいいですよね。
もしかしたら10年経てば子どもができてる家族もあるだろうし、家族同士の付き合いをしてる方々も出るだろうし、親との関係も間違いなく変わってますからね。そういった人たちを巻き込んでいくと、より楽しいものになりますよね。
能作千春さん
サプライズで挙げられる方もいれば、県外からのご利用が7割ぐらいで、旅行を兼ねて楽しみたいって方もいらっしゃる。
錫婚式って、結婚式っていうよりは、私どちらかというと「アトラクション」や「アミューズメント」に近いと思っていて。
アッティ
なるほどなるほど。
能作千春さん
アニバーサリーアミューズメントみたいな。
アッティ
なるほど。県外のほうが多いんですね?
能作千春さん
県外の方が旅行地として定めていただき、富山を楽しみ、その中心に錫婚式があるっていうような。
アッティ
面白いですね、錫婚式。私自身は10年経ってしまってるのでなかなかできませんけども、ぜひとも広げてみたいと思います。また、参加もしてみたいなと思いますね。
今回は以上とさせていただいて、次回は最終週ということで、千春さんのお気に入りの歌であったりとか、ふるさと富山についての想いであるとか、そういったことについてお話をいただきたいと思っております。
富山への想い&オススメ店&リクエスト曲
ふるさと富山について
能作千春さんが富山で一番好きなところは、自然や景色、そして産業の魅力です。
一度県外へ出て戻ってきたことで、「富山って私が気づかなかったいいところがたくさんあるな」と感じています。
アッティ
ここまで3回にわたって、能作自身の活動、そしてまた千春さん自身の活躍もいろいろお聞かせいただきました。最終回になりますので、ぜひともいろんなことに対する想いをお聞かせいただきたいと思います。
能作は、今、日本に限らず全世界に向けて富山の良さを発信されていることだと思いますが、ふるさと富山、高岡についての想いを聞かせていただけますか?
能作千春さん
私は1回県外に出てるっていうのもあるんですけれども、やっぱり富山に帰ってきて思うのは「本当に富山って私が気づかなかったいいところがたくさんあるな」っていうことです。
食が美味しいですし、山と川があって景色もいいですし、空気も美味しいし、そして何より子育てもしやすい。
私は富山県がすごく好きなんですけれども、その魅力に気づくまでに結構時間がかかってしまったっていう印象です。
産業観光を始めて、様々な業者の方、職種の方と知り合うことができて、そこでさらに魅力を発見していっている。そんな真っ只中です。
アッティ
富山で一番好きなとこってどこですか?
能作千春さん
私はやっぱり景色ですね、自然。
アッティ
新社屋から見える景色も結構いいんじゃないですか?
能作千春さん
そうなんですよ。カフェでお食事されてる方とかも、山を見ながら食事されたりだとか。けっこうきれいな場所ですよね。
アッティ
もともと編集をされていて編集目線が今の仕事にも活きているって話と一緒で、富山の良さっていうのは、県外に出た経験があるのとないので全然変わってくるのかもしれないですよね。
能作千春さん
そうですね、やっぱり一回外に出てわかることっていうのもあるなって思います。
あと、うちは鋳物を作っている会社なので、やっぱり「産業の魅力」。これは大きいです。
富山にいるからできていることとか、富山にいるから伝えられることっていうのが、やっぱりあるなとは思います。
アッティ
よく県外の方が来られて、富山でタクシーに乗って「どっか良いとこないですか?」っていうと、「なんもないちゃ~」って言われるってことも聞くんですけれども。
間違いなくそういったものが少しずつなくなっていってね、胸を張って「富山の良さってここです」みたいな。もちろん能作さんも中に入りながら、そういった形になるとより良いなと思いますね。
能作千春さん
県民はみんな自信持っていいと思うんですよ。「良いところいっぱいあるよ!どこから行く?」って。
アッティ
それをみんなが語れるようになりたいですよね。
人生のこだわり
能作千春さんは、母親として仕事と育児を両立し、子どもたちに「ママの仕事は素晴らしい」と思ってもらいたいという強い想いを持っています。
また「仕事って本当に楽しいよ」ということを伝えていきたいという、教育的な想いもすごく強いです。
アッティ
ここまでいろいろ千春さんの活動を聞いてはきたんですけれども、千春さん自身の人生のこだわりって何かありますか?
能作千春さん
人生のこだわり。そうですね、私は2児の母親として「お仕事」と「育児」っていうのをうまく両立できてるかはわからないですけれども、どっちもやっている。
子どもに「ママってすごい素敵な仕事をしてるね」「素晴らしい産業に関わってるね」って思ってもらいたい、って想いは強いです。
小さな頃、私は鋳物業っていうのが「かっこ悪い」って思っていました。でも「鋳物業ってすごいかっこいいし、あとに残さなきゃいけないんだ」って、特に富山の子どもたちがそう思ってくれるような会社でありたいなっていうのは、想いとしてはあります。
アッティ
ママとしての背中が、間違いなくお子さんの人生に繋がることだと思います。
それを見せ続けることと、鋳物業が高岡として富山としての成り立ちの話だけでなく、われわれみんなの誇りになるような活動になるといいですよね。
能作千春さん
仕事って楽しいものだと思うんです。私もそうですし父親もそうなんですけど、仕事が本当に大好きで。
私達は経営者だから、プライベートも関係なく結構なんでも仕事の話に繋げちゃったりだとかしちゃうんですけれども。
でも、きっとそれって楽しいからそうしてるんだろうなと思うんです。今の子どもたちに「仕事って本当に楽しいよ」っていうのを伝えていきたいっていう、教育的な想いがすごく強いです。
アッティ
「仕事っていうのはお金のためであって、本来は辛いもの」みたいな感じを持ってる方が多いような気がしますからね。
能作千春さん
そうなんですよ。いろいろな小学校に行って授業させていただいたり、修学旅行だったり、産業観光を通して子どもたちと触れる機会ってすごく多いので、「仕事は辛いものって思ってる」っていう子どもたちの声もたまに聞くんですよ。そうすると、もったいないなと思って。
アッティ
人生のかなりの部分を仕事に費やしますから、お金のためだけではなくやりがいをもって、ニコニコしながら仕事ができるってのは最高ですからね。本来はそういうものですから。
能作千春さん
はい。
富山県内で大好きな飲食店
アッティ
いろんなところに食事に行かれてると思うんですが、富山、高岡も含めてお気に入りの飲食店ってどこかありますかね?
能作千春さん
美味しいものがたくさんあるので、すごく悩むんですけれども、やっぱり富山といえばお寿司かなと思って。お魚すごく美味しいですし。
っていうので、私のおすすめの飲食店は、高岡にある「鮨金」さん。
アッティ
有名な。
能作千春さん
記念のときとか、あとは大事なお客様がいらしたときとかに利用させていただくんですけれども、すごくリッチな気分になれて。
アッティ
そうですよね。
能作千春さん
普段は子どもと回転寿司なんで。
回転寿司もすごく美味しいんですけれども、旦那さんとの記念に行ったりとかします。
アッティ
いいですね、ネタは何が好きなんですか?
能作千春さん
ウニ (笑)
アッティ
(笑) 美味しいですよね。
たまの贅沢は非常にやりがいに繋がりますし、ニコニコになりますよね。
能作千春さん
そうなんです。
リクエスト曲
アッティ
最後の方になってまいりましたけれども、千春さんの方から大好きな曲を一つリクエストしていただきたいと思います。
能作千春さん
好きな曲は、星野源さんの「喜劇」っていう曲を。
アッティ
なるほど、この歌はどういったことで選定されたんですか?
能作千春さん
私はふだんあまり音楽って聞く方じゃないんですけれども、娘がけっこう歌とか好きで。今、ハマっているアニメの主題歌がこの曲なんです。
毎日料理しながら耳に入ってくると、ちょっと愛着が持ててですね。
アッティ
勝手に耳に入ってくるという。
能作千春さん
そうなんです、そうなんです。
アッティ
じゃあ、お子さんはこの歌が大好きなんですね?
能作千春さん
はい、いつも口ずさんでいます。
アッティ
わかりました、ありがとうございます。それでは千春さんのリクエスト曲で、星野源さんの「喜劇」です。
これからの夢や目標について
能作千春さんの夢は、企業として人の人生の節目に幸せを届けることです。錫婚式などのサービスを通じて顧客と繋がり、再訪してもらえる企業を目指しています。
また、組織としての成長と事業拡大も目標としています。
アッティ
それでは最後の最後になりますけれども、千春さんのこれからの夢、目標についてお聞かせいただけますか?
能作千春さん
物もそうですし、サービスを通してもそうなんですけれども、「人の人生の中に企業として幸せを届けたい」「節目節目に寄り添えるような、そんな企業でありたいな」と思ってるんです。
今、うちがおこなっている錫婚式もそうなんですけれども、人生の節目で関わって、錫婚式を3年前に挙げた方がまた帰ってきてくれるわけですよ。
そういうのってすごく幸せだなと思っていて、「寄り添う」ってそういうことじゃないかなって思うんですよ。すごい漠然としてるんですけれども。
私個人に関しては、スタッフと社長など、これからも繋ぐ役目として。さらに今170人のスタッフがいるので「組織として成長して繋がりを深めていきたい」「組織として事業を拡大していく会社になっていきたい」と思います。
アッティ
ありがとうございます。
今月全4回にわたって、千春さんが能作へ入社するきっかけから始まりまして、産業観光、また錫婚式など様々な挑戦についてお話をいただきました。
当初はどちらかというと能作の商品が世の中で目立っているなと思っていたんです。しかしそれだけでなく、産業観光や、最終的には錫婚式を含めて人生にまで影響を与えていくという「そういった会社作りと考え方も本当に素晴らしいな」と、そして「私もいつか錫婚式に参加してみたいな」と思ったりもしました。
それでは今月のゲストは、株式会社能作の代表取締役社長 (取材当時、専務取締役) 能作千春さんでした。1ヶ月間ありがとうございました。
能作千春さん
ありがとうございました。
アッティ
この番組のこれまでの放送は、ポッドキャストで聞くことができます。FMとやまのホームページにアクセスをしてみてください。
お風呂の中でのぼせてまいりましたので、そろそろあがらせていただきます。アッティでした。