【玉生 貴嗣さん】玉旭酒造有限会社 代表

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表

こんにちは、アッティです。
アッティの熱湯とやま人」は、富山のために熱い気持ちを持って頑張る人の本音に迫る番組!

今回のゲストは、玉旭酒造有限会社 代表の玉生 貴嗣(たもう たかつぐ) さんです。※2024年8月現在

創業216年の老舗酒蔵を継いで13代目を務め、「日本酒で世界はもっと美味しく味わえる」をモットーにこだわりの地酒を造っておられる玉生さんに熱く迫っていきます!

玉旭酒造有限会社

この記事は、FMとやま 金曜17:15~17:25放送のラジオ「アッティの熱湯とやま人」の編集前データを、ほぼノーカットでまとめたものです。

放送では流れなかった裏話も含め、お楽しみください。

目次

玉旭酒造の13代目を継ぐまで

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表。テーマ1

日本酒「おわら娘」の由来

要約

玉旭酒造の日本酒「おわら娘」の名前は、おわら風の盆の踊り手に25歳以下の未婚女性という制限があることから、娘への親心と酒づくりへの想いを重ね合わせて命名されました。

アッティ
玉生さん、どうぞよろしくお願いします。

玉生貴嗣さん
よろしくお願いします。

アッティ
全5回ありますのでね、たっぷりとお話を聞いていきたいなと思っております。

玉生貴嗣さん
アッティが湯冷めしないように、熱く楽しい時間にしたいと思います。よろしくお願いします。

アッティ
この番組、実はもう2年半ぐらいやっているのですが、酒蔵さんには初めてお越しいただきました。

玉生貴嗣さん
そうですか。

アッティ
日本酒の話を聞けることがすごい楽しみです。

私は、玉旭さんの「おわら娘」をよく飲まさせていただいているので。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。

アッティ
八尾の酒蔵さんなので「おわら」ってのもわかるのですが、この名前って何かこだわりがあるんですか?

玉生貴嗣さん
アッティさん、おわら風の盆に「踊るルール」があるのをご存知ですか?

アッティ
踊るルール?

玉生貴嗣さん
はい、踊り手の年齢制限があるんです。

アッティ
どういうルールですか?

玉生貴嗣さん
「25歳以下、未婚の女性」っていうルール。

私にも娘がいまして、今23歳なので、あと2年しか踊れないんです。

アッティ
年齢制限に引っかかっちゃうんだ?

玉生貴嗣さん
「25歳まで踊ってる姿を見ていたい、でも早く嫁に行って幸せになってもらいたい」という親心と、われわれ造り手が真心込めて作ったお酒を「早く皆さんに召し上がってもらいたいけど、ずっと蔵の中で眠っていてもらいたい」という親心を掛け合わせて「おわら娘」なんです。

アッティ
娘さんができてから、この名前がついたお酒ができたんですか?

玉生貴嗣さん
そんなことはないですね (笑)

アッティ
(笑) それは違うか。想いとしてはそんな想いだということですよね。

なるほど面白いですね、今日はこういうお話をたっぷりと聞いていきたいと思っております。

幼少期と学生時代

要約

玉生貴嗣さんは、富山県で2番目に古い酒蔵の13代目。2024年8月現在49歳で、40歳から代表を務めています。

幼少期は多くの習い事に励み、中高は全寮制の男子校の厳しい環境で生活。日本酒への関心は遅く、学生時代までは酒づくりとは無関係の生活を送りますが、最終的に1808年創業の伝統ある酒蔵を継承します。

アッティ
まずは最初に、簡単な自己紹介と、酒蔵のご紹介をいただけますでしょうか?

玉生貴嗣さん
富山県に17蔵、私どものような造り酒屋がございまして、その中で2番目に古い酒蔵です。1808年創業で、私で13代目を迎えようとしています。

伝統は重たいけど、給料袋は超軽量という13代目を過ごしています。

アッティ
いいですね (笑) いろんなテーマがありますよね。

玉生貴嗣さん
会社に入ったのが2000年でして、代表に就いたのが40歳のとき。

アッティ
今、おいくつですか?

玉生貴嗣さん
49歳になります。
※2024年8月現在

アッティ
じゃあ、まもなく10年経つと。

玉生貴嗣さん
そうですね。

アッティ
現在49歳ということですけど、生まれた頃を含めて、幼少期というか小さな頃って、どんなお子さんだったんですか?

玉生貴嗣さん
小学生のときは、とにかく習い事ばっかりの6年間でした。

アッティ
そうなんですか!? 何となくお酒のことをずっと学んでいくイメージがあるんですが、そんなわけではなくて習い事だらけ?

玉生貴嗣さん
小学校6年間は、勉強の算数・国語の塾はもちろんのこと、英会話、ピアノ、サッカー、剣道、卓球、水泳、習字…。

絵に描いたような「ぼんぼん」でした。

ぼんぼん (坊々)
親に甘やかされて育ったエリートの息子

アッティ
ぼんぼん。なるほど。

日本酒を造られてるってことは、それにいつも添いながら、お酒についての学びを中心にやってこられてるイメージがあるんですが、そんなことは全くなくですか?

玉生貴嗣さん
全くなく! もう習い事で過ごした6年間だったような気がします。

アッティ
そこからは?

玉生貴嗣さん
中学・高校と石川県の全寮制の男子校に行きました。

3食決められた給食で、男子校。マンガ、ジュース、お菓子禁止という、なかなか厳しい学校で6年間過ごしましたね。

アッティ
そこもやっぱり勉強?

玉生貴嗣さん
勉強。

アッティ
今のところ学生に至るまで、ほぼ「勉強」って感じがするんですけど、日本酒に目覚めることってどこであったものなんですか?

玉生貴嗣さん
日本酒に目覚めることはまだ、今もないような気がしますけどね (笑)

アッティ
そういうことですね (笑)

歯科医から酒づくりへの転身

要約

玉生貴嗣さんは大学時代、歯科医を目指していましたが、祖父の死去と父の酒蔵廃業の検討話をきっかけに酒蔵の継承を決意しました。

3年間の酒づくり修行を経て杜氏となり、家業を存続。現在は社長として、杜氏と協力しながら事業を展開しています。

アッティ
社長になるかどうかは置いといてですけど、「日本酒の道に進むんだ」と思われたのはいつ頃なんですか?

玉生貴嗣さん
大学生の期間中に、祖父が亡くなりまして。

アッティ
大学生のときに。

玉生貴嗣さん
そのときにですね、父が「もう売り上げも下がっちゃって、酒づくりを家業として続けていくにはかなり厳しいんだ」と。

「もうこの酒づくりをやめて、この敷地を駐車場にしようかと思うんだ」と。

アッティ
もう酒づくりをやめようと?

玉生貴嗣さん
「もう会社をたたもう」と。

「駐車場にしていこうかと思うんだけど、どう思う?」って言われたときに、「自分が生まれ育った家、敷地、空間がなくなるのはなんということか」ということで、「ちょっと親父、3年間、時間をくれないか?」と。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
それまで歯科医を目指してたんですけど。

アッティ
えっ!? 歯科医を目指してたんですか?

玉生貴嗣さん
歯科大学の3年生の途中で、「親父、3年間頑張ってくれないか? 自分はちょっと修行に行くから」と。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
歯科医を諦めて、住み込みで酒づくりの修行をしに広島に行って戻ってきたという経緯です。

アッティ
学生時分にかなり勉強をされて歯科医を目指したっていうのは、何でだったんですか?

玉生貴嗣さん
人のために医療従事者になりたかったということと、子どもが好きだったので、子どもの矯正歯科とか、いろんなおもちゃを作りたいと。

アッティ
「何かを作りたい」って気持ちがあったんですね。

玉生貴嗣さん
そうですね。

アッティ
親から「会社をたたむ」って話が出るまでは、「継ぐ」ってことを全く考えてなかったんですか?

玉生貴嗣さん
考えてなかったです。

歯科の開業医になる予定で頑張ってましたから。

アッティ
頭の片隅にあるとか、そんなこともなく?

玉生貴嗣さん
そうですね。

アッティ
でもやっぱり「ここをたたもうか」って言われたときには、やはり何かが自分の中にあったんでしょうね。

玉生貴嗣さん
そうですね、青ざめましたね。「帰るところがなくなる」ってことの恐ろしさに。

アッティ
なるほどなるほど。

玉生貴嗣さん
自分の部屋がなくなって建物が駐車場になるなんて、ちょっと想像がつかなくて。

でも今では、おかげさまでその敷地を広げて、観光バスを停められるような駐車場を増設しました。

アッティ
むしろ逆に、増やすことができたと。

玉生貴嗣さん
はい、同じ駐車場でも。

アッティ
3年間、広島に行かれたのは、日本酒づくりの勉強ですか?

玉生貴嗣さん
日本酒づくりだけじゃなくて、その当時「国税庁醸造研究所」っていう研究施設がありまして。

日本酒はもちろんのこと、ワイン、焼酎、ビール、ありとあらゆる物を原料からつくる勉強をさせてもらいましたし、冬場はブドウ栽培から。

アッティ
私は全然わからないんですけど、3年間学ぶことで、ある程度できるようになるものなんですか?

玉生貴嗣さん
そうですね。帰ってきて2年後には「杜氏 (とうじ)」になりましたし。

杜氏 (とうじ)
酒づくりの最高責任者

アッティ
杜氏になるわけですね、そこで。

日本酒の酒蔵には、必ず杜氏さんはいらっしゃるんですか?

玉生貴嗣さん
1名いらっしゃいます。

アッティ
その人が経営者になってるわけでもないんですよね?

玉生貴嗣さん
その人がなってる蔵もあります。

アッティ
あることはあると。

玉生貴嗣さん
はい。社長兼、杜氏。

アッティ
杜氏じゃない経営者もいらっしゃるわけですよね?

玉生貴嗣さん
はい。弊社は、私が社長で、杜氏は別で1人います。

アッティ
そこで、杜氏ではなく、酒を中心に売っていく経営を学びに行こうとは思わなかったんですか?

玉生貴嗣さん
経営者たるもの、作るもの・売るものを、ちゃんと自分の身で研究して、原理を習得しないと。

アッティ
こだわりを持ってね、なるほど。

玉生貴嗣さん
そのために、3年間修行に行ってきましたね。

アッティ
そうですか、わかりました。

あっという間に、幼少期や、「日本酒づくりに進もう」と広島で修行されたときまでのお話をいただきました。

次回は、玉旭酒造に入られてからのお話をいただきたいと思います。

日本酒づくりへの圧倒的なこだわり

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表。テーマ2

広島での酒づくりの修行

要約

玉生貴嗣さんは、全国のお酒を学べ、日本酒以外の酒造りも研究できる利点があったため、広島の国税庁醸造研究所で修行を積みました。

幅広い知識と経験を得られる環境を選んだことが、玉生さんの酒造りの基礎となっています。

アッティ
前回は、幼少期からの話。そして玉旭酒造さんに入るまでの話、広島で3年間修行された話をいただきました。

ちょっとわからないんですけど、たぶん全国いろんなところで日本酒を学ぶ場所はあると思うんですが、あえて広島のそこに行ったのには、何か理由があるんですか?

玉生貴嗣さん
一つの酒蔵さんに住み込みで勉強しに行くとなると、その酒蔵の一つの味しか勉強できないんです。

でも、当時の広島の「国税庁醸造研究所」は、全国各地のお酒を学べ、日本酒以外にも、ビール、ワイン、焼酎の酒づくりまでも研究できるという施設だったので、そちらを選びました。

アッティ
なるほど、理にかなっていますね。

全国のお酒だけじゃなく、場所場所による雰囲気なども学ばれたわけなんですね?

玉生貴嗣さん
はい。

アッティ
ちなみに、日本酒をつくる道に行く前は、日本酒づくりに全然興味なかったって話だったんですけど、お酒は何が好きだったんですか?

玉生貴嗣さん
ビールです (笑)

アッティ
(笑) 今もなんですか?

玉生貴嗣さん
そうですね、いい勝負してますね (笑)

アッティ
(笑) いい勝負してるの? どっちが上かは置いておいて。

玉生貴嗣さん
いい勝負してますね (笑)

独自酵母の発見

要約

玉生貴嗣さんは、広島での研修後、独自の酵母開発に挑戦しました。

多くの酒蔵が通信販売の酵母を使用する中、富山の特色を生かそうと、立山の高山植物「ウラジロタデ」とチューリップ「キャンドルライト」から清酒酵母を発見。この独自酵母を使用して酒造りを行っています。

全国的に見ても、ゼロからオリジナル酵母を作る酒蔵は珍しく、玉旭酒造の特徴となっています。

アッティ
こうやって玉旭さんを継いでみて、入ってみてどうでした?

玉生貴嗣さん
アッティはご存知かもしれないですけど、まず日本酒は、お水と、お米と、酵母からできてるんですね。

アッティ
そうですね、うん。

玉生貴嗣さん
その酵母は、実は、通信販売で買うんです。

アッティ
えー! 本当ですか?

玉生貴嗣さん
なので、ちょっとイメージ的に、お水とお米が大体一緒だったら、あとは酵母の違いになる。

9号酵母とか10号酵母、13号酵母って、通信販売で買って、たとえば同じ9号酵母を使ったら、「似たようなお酒になるんじゃないかな?」って想像ができますよね?

アッティ
本当にそうなんですか?

玉生貴嗣さん
と思いません?

アッティ
思います思います。

玉生貴嗣さん
広島の施設で「通信販売じゃなく、自分で酵母を開発できないか?」と、夏場に3年間研究したんですね。

そのときに、いろんな文献とか先生から「植物の花粉から日本酒の清酒酵母を発見できるぞ」ってヒントをいただいて、富山に戻ってきました。

アッティ
それはどう活きたんですか?

玉生貴嗣さん
富山といえば、チューリップか、立山の高山植物かって思うわけですよ。

アッティ
そうですよね。

玉生貴嗣さん
せっかく富山に帰ってきたので「富山らしい植物の花粉から酵母を発見したいな」と思って。

立山の許可をいただいて、高山植物の177品種の花粉を綿棒にチョンチョンと取ってサンプリングして、富山県食品研究所とタイアップして177分の1「ウラジロタデ」って高山植物から、唯一、発酵能力がある酵母を発見しました。

アッティ
見つけたんですか!? へえ~!

玉生貴嗣さん
同様にチューリップ公園さんに協力をいただいて、そちらも77分の1「キャンドルライト」って品種から、日本酒ができることを発見しました。

その清酒酵母で、今も、お酒づくりをさせてもらっています。

アッティ
なるほど、めちゃくちゃ面白い話ですね!

全国に酒蔵さんはいっぱいあるじゃないですか? その多くは、通販で酵母を買われているんですか?

玉生貴嗣さん
通販、もしくは9号と10号を掛け合わせて、ブレンドをして「自社酵母」として使用されている。

アッティ
みなさん、あんまりオリジナルではないってことですね。混ぜることによって、オリジナルと思えばそうかもしれないですけど。

本当にゼロから作るっていうのは、あまりされてないんですか?

玉生貴嗣さん
そうです。でもその前に、お水とお米にこだわりを持ってされてたら違いは出ますけど。

アッティ
出ますよね。

100%地元産に変えたきっかけ

要約

玉旭酒造は、常願寺水系の伏流水を使用し、十数年前から富山県産の酒米100%にこだわっています。

以前は、コンクールで金賞を取るために兵庫県産の山田錦を使用していましたが、おわら風の盆での客との対話をきっかけに方針を変更。地元の水、米、人にこだわる「真の地酒」を目指すようになりました。

アッティ
ちなみに、富山、特に八尾ですけど、お米と水はどうなんですか?

玉生貴嗣さん
お水は、代々、常願寺水系の伏流水を使用しています。

八尾の立地と常願寺川をイメージしたら、間に神通川が通ってるんです。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
でも神通川の下を通って、長い年月をかけて、それだけのフィルターをしっかり通って、八尾で湧き出てると思ったら、結構ロマンですよ。

アッティ
面白すぎますね!

玉生貴嗣さん
お米は、十数年前に「富山県産の酒米100%を使用しよう」って決断しました。

アッティ
それまではどうだったんですか?

玉生貴嗣さん
「兵庫県産の山田錦じゃないとコンクールで金賞をとれない」というジンクスと言いますか、都市伝説がありまして。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
それまでは、金賞欲しさに兵庫県から山田錦の最上級のお米を取り寄せて、お酒を作って、コンクールにエントリーしてました。

アッティ
なるほど。で、それはどうだったんですか? やっぱり自分の中で納得いってなかったんですか?

玉生貴嗣さん
納得いかないエピソードがありまして。

アッティ
どうぞ。

玉生貴嗣さん
十数年前に、おわら風の盆にいらしたご婦人が「こちらの最上級の大吟醸、これいただけますか?」っておっしゃられたんですね。

「ありがとうございます」と応じると、「ちなみに、どちらの酒米を使ってらっしゃるの?」って質問されたので、自信満々に「兵庫県産の特A地区の最上級の山田錦を使用しております」なんて胸を張って言ったわけです。

そしたらそのご婦人は「ああそう、じゃあ結構よ」って、酒を棚に置かれました。

アッティ
そうなんですか?

玉生貴嗣さん
「私は兵庫から来てて、うちの近所のお米で作ったならば、富山の地酒じゃないじゃない。富山の八尾の地酒を買いに来たので、それならば結構よ」って言われたのが、あまりにも衝撃的で、「おっしゃる通りだな」と。

それ以来、人も水もお米も…

アッティ
全部地元で?

玉生貴嗣さん
はい。

酒母搾り「MOTHER」誕生のきっかけ

要約

玉旭酒造は約10年前、地域貢献のため八尾の山間部で自社米作りを開始しましたが、初年度は予定量の30分の1しか収穫できず、通常の製法が不可能でした。

そこで、酒母だけで絞る「酒母搾り」を試みたところ、独特の甘くてジューシーな日本酒が。これが「玉旭 MOTHER」誕生のきっかけです。

アッティ
米は、自分たちのところで作り始めたんですか?

玉生貴嗣さん
JAさんとの契約で、まず富山県産のお米を作っていただいて。

その後「自分の手でも酒米作りをしたいな」ってことで、八尾で始めました。

アッティ
自分たちで実際に米も作り出したと。それはどうなっていったものなんですか?

玉生貴嗣さん
きっかけは約10年前、八尾町のちょっと山あいのところのご老人に「うちのおじいちゃんが亡くなって、先祖代々続いた田んぼが荒れ果てて、あいそないがやちゃ (さびしい、わびしい)、玉旭さんで何とかできない?」って、ご相談を受けて。

われわれ、もう何十年何百年とお酒づくりをさせていただいてるのに「米作りって1回もしたことないな、これはもう原点に返るべきだ」と思いまして。

「人助けとか、まちづくりに反映できるならば」と思って、山あいの田んぼをお借りして、自分たちでやるようになりました。

アッティ
そこから全国でも珍しい「酒母搾り (しゅぼしぼり)」というのが?

玉生貴嗣さん
そうなんです。

アッティ
そこで見つけられたということなんですか?

玉生貴嗣さん
今まで酒づくりしかしたことがない人間たちが米作りをするとなると、全く別のもので。

お米作りに関してはあまりにも素人の集まりだったため、予定量の30分の1しか収穫できなかったんですね。

アッティ
すごい少なかったんですね。

玉生貴嗣さん
「30分の1のお米で、どうやってお酒づくりするよ?」と。

お酒づくりの工程で、野球でいえば、1回裏が終わったぐらいまでしかできてないんです。

アッティ
まだ全然ですね。

玉生貴嗣さん
まだ全然で、肩も温まってないんですよ (笑)

アッティ
ナイターでいくと、まだ夕方で明るいみたいな?(笑)

玉生貴嗣さん
まだ明るいんです。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
お酒づくりは、酒母 (しゅぼ)という酵母が生き生きとしている濃縮された酒母づくりを10日間して、その後、三段仕込みをして量を増やして、2回から9回まで量を増やして酵母を発酵させて、甘い糖を酵母がパクパク食べてアルコールに変えて、辛いお酒が出来上がる。

アッティ
なるほど、何となくわかります。

玉生貴嗣さん
「少量の30分の1のお米しかできなかったから、本来の作り方ができないね。でもせっかくみんなで作ったお米だから、少ないけどそれだけでもいいじゃん。それで絞っちゃおうよ」と。

アッティ
作ろうとしたわけですね。

玉生貴嗣さん
「その10日間の酒母だけで絞っちゃおう」で絞ったら、一升瓶12本だけできたんです。

それが、まぁ甘くてジューシーで、酸味もあって。今までに味わったことのない純米酒が出来上がって「なんだこれは!?」と。

アッティ
それは何でそうなったんですか?

玉生貴嗣さん
酵母が糖をアルコールに変える割合が少なくて、甘くて酸味の強い日本酒になったという。

原理はそうなんですけど、それがあまりにも美味しくて。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
その次の年からは収穫量が倍ぐらいに増えていくんですけど、決して辛口のお酒作りにはチェンジせずに、酒母搾りを少しずつ増やしていくという方法で。

アッティ
その方法自体も難しそうな感じするんですけど、そうでもないのですか?

玉生貴嗣さん
1つのタンクで多くは作れないので、タンクの個数を増やしました。

アッティ
なるほど。少量を作っていくのがベースなんですね?

玉生貴嗣さん
そうです。で、酒母は「酒の母」と漢字で書くので、「玉旭 MOTHER」と名付けて。

アッティ
はいはいはいはい!

玉生貴嗣さん
あまりの美味しさと、取り組みと、みんなで泥んこになるという楽しみ方というか。

アッティ
自分たちで米を作るからという?

玉生貴嗣さん
みんなで泥んこになって収穫を味わう。

今じゃあ、県内外から40〜50人の方が集まって。

アッティ
みんなで米を一緒に作ってですか!?

その特殊な作り方が、今の「MOTHER」もそうですし、「ECHOES」などいろんなものに繋がってると。

玉生貴嗣さん
まずは一番最初の失敗からでしたね。

アッティ
酵母も自分たちで研究したし、米自体も自分たちで研究したってことで。いや~、もう今すぐ、めちゃくちゃ飲みたくなってきましたね!

それでは、今回は以上とさせていただきます。次回は、いよいよ9月が「おわら風の盆」ということで、地元八尾について、そしてまた「おわら風の盆」についても話をお聞きしたいと思います。

越中八尾との繋がり

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表。テーマ3

おわら風の盆との深い関わり

要約

玉生貴嗣さんは、幼少期からおわら風の盆と共に育ちました。

お祭りと地酒は、不可分の関係。おわら風の盆は玉旭酒造にとっても重要な行事で、地域の伝統文化への感謝を忘れないよう心がけています。

アッティ
日本酒には、水、米、酵母が必要である。酵母は研究してチューリップ、立山からとってきた。米も自分たちで作っている。

前回は、このように独自性のあるお酒を作られている話をお聞かせていただき、すぐにでもお酒を飲みたくなってきたんですけども。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。

アッティ
今回は、来月はいよいよ、全国の方が楽しみにされている「越中八尾 おわら風の盆」が開催されますので、これについて少しお話をいただきたいなと思っております。

生まれた頃から八尾で、おわら風の盆とはずっと触れながらいらっしゃったんじゃないかなと。

玉生貴嗣さん
そうですね。八尾で生まれた子どもたちは、歩けるようになったら、おわらを習うっていうのが。

アッティ
玉生さんも、普通に踊れる?

玉生貴嗣さん
はい。幼稚園、保育所、小学校はもちろん中学校の運動会は、必ず、おわら踊りで締めるっていう。

アッティ
じゃあもう、皆さん踊れるわけですね。玉生家のお子さんも、みんな踊れると。

玉生貴嗣さん
私よりも上手ですね。

アッティ
そうですか、なるほどなるほど。

日本酒を作っている立場として、おわら風の盆に参画するとなったときにどうでしたかね?

玉生貴嗣さん
もちろんお祭りには、その土地土地の地酒は必ず付き物だと思うんですよね。

八尾町には5月3日の曳山祭りもありますし、今おっしゃっていただいた9月1日2日3日のおわら風の盆。それらのお祭りに支えていただいて、励まされて、われわれ216年、酒づくりをさせていただいてるんだなと。

そういう気持ちがあるので、お祭りとか伝統文化はいつも隣にいるし、感謝の気持ちを忘れたらダメだと思ってます。

アッティ
1年の中でも大きな行事の一つであるっていうのは、玉旭酒造さんとしてもやっぱりあるわけですね?

玉生貴嗣さん
そうですね。お祭り当日もそうですし、あの地方 (じかた) の方、演奏の方もそうですし、踊り手の方々も、季節問わずに週に1〜2回練習をされていますし。

アッティ
一年中!? おわらが近づいてきたからとかではなく、いつもずっと横にあるって感じなんですかね?

玉生貴嗣さん
そうです。

福鶴酒造との協力関係

要約

コロナ禍を機に、越中八尾の2つの酒蔵 (福鶴と玉旭) が長年のライバル関係を超えて協力。両社の純米酒を50:50でブレンドした「八尾ブレンド」を開発しました。

この取り組みがきっかけとなり、CMへの出演や鱒寿司とのコラボイベントなど、新たな展開が生まれ、地域活性化と観光振興にも貢献しています。

アッティ
最近「八尾ブレンド」というお酒をつくられてると思うんですけど、ちょっとそれについてお話してもらえますか?

玉生貴嗣さん
八尾町には、造り酒屋が2蔵あるんです、福鶴さんと玉旭。これだけ近くにあるのは、全国的にも稀で。

300年の歴史があるおわら風の盆が、コロナの影響で2年間中止になった時期がありまして。もうこんなときだからこそ、その2蔵がケンカしてても仕方ないだろうと。

アッティ
やっぱりそこは、ライバル意識がものすごいあったわけですか?

玉生貴嗣さん
昔はもう、バチバチでしたね。

アッティ
バチバチで (笑)

玉生貴嗣さん
バチバチでしたね。酒造組合には17蔵が加盟してるんですけど、その会合とか宴会とかがあっても、隣には座りませんでした (笑)

アッティ
そういうものだったんですね。それが今回のコロナで同じ痛みを味わって。

玉生貴嗣さん
そうです。「戦うべきは隣の蔵じゃない」って、お互い確認しました。

今、戦うのはコロナであって「今こそ2人が手を取り合って新しいものを作り上げて、新しい八尾を目指して歩み出そうじゃないか」ってことで、双方の純米酒を持ち寄って、50:50でブレンドをして「八尾ブレンド」という。

アッティ
これは、お酒同士を混ぜるんですか?

玉生貴嗣さん
そうです。

アッティ
水、米、酵母でお互い何かをするとかではなくて、「混ぜる」という?

玉生貴嗣さん
混ぜるという。

お互い自信のある純米酒同士を同量入れて、1つのアイテムを作ろうと。

アッティ
とはいえ、お互い50:50で混ぜるじゃないですか? それだけなんですか?

それともやっぱりいろんなこだわりがあって「この酒とこの酒にしよう」とか、そういうのがある?

玉生貴嗣さん
事前にテイスティングの時間を設けました。

お互い3アイテムずつ、それぞれ持ち寄って「どれとどれのマッチが一番美味しいかね」と。

アッティ
それはもう、2つの酒蔵の何人かが集まって、みんなでやり取りをして?

玉生貴嗣さん
それぞれの社員同士が集まって。

今までバチバチで配達中でも挨拶も交わさなかったぐらいの者同士が、もうそれ以来は仲良くいろんな相談をしあうようになりました。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
「八尾ブレンド」の取り組みは、「サッポロ一番味噌ラーメン」を出されてるサンヨー食品さんの目にとまって、CMにも取り上げていただいてですね。

アッティ
はいはいはい。

玉生貴嗣さん
福鶴酒造の社長さんと、弊社、私も含めたそれぞれの社員がみんなで、「サッポロ一番味噌ラーメン」の鍋をつつくというCMにまで出させていただきました。

アッティ
最高ですね!

玉生貴嗣さん
何かいい機会だったなと思います。

アッティ
この2蔵が仲良くなっていくのが、おわら風の盆における目玉にもなっていくというストーリーがまたいいですよね。

玉生貴嗣さん
その後おわら期間以外にも、福鶴酒造さんと玉旭酒造で、富山の鱒寿司とのコラボレーションイベントをさせてもらったりですね。

アッティ
へぇ~。

玉生貴嗣さん
玉旭の、どのお酒が、源さんの鱒寿司に合うかとか。

アッティ
鱒寿司もいろんな種類があるから。

玉生貴嗣さん
関野屋さんに合うかとか、千歳さんに合うかとか、鱒寿司組合さんが持ち寄ってくださって八尾の地酒とマッチする。

アッティ
面白いですね。

玉生貴嗣さん
定員30名で、そのパーティーを開いたりですね。

アッティ
いや、めちゃくちゃ面白いですね。

玉生貴嗣さん
「八尾ブレンド」がなかったら、そういう発想すらなかったなと。

アッティ
今度のおわら風の盆で「この鱒寿司と合うのは、この日本酒だ」って合わせて食べるのは、観光客にしてみたらかなり楽しいですよね。

素晴らしいですね、こういう考え方に至るってことが。

玉生貴嗣さん
はい。

能登地震の復興支援活動

要約

玉生貴嗣さんは能登地震の被災地支援として、特別な「復興支援大吟醸」を販売し、694本の売上全額を能登石川県と富山県の酒造組合に寄付しました。

能登杜氏との深い縁が背景にある中での、日本酒ファンの支援の想いを形にする取り組み。地元先輩の励ましも後押しとなり、迅速な支援活動を実現しました。

アッティ
コロナがきっかけという話がありましたけど、コロナ禍の非常に厳しい状況の後、2024年の元旦には能登で大きな地震がありました。

これに対して、大きな支援活動をされたと聞いたんですが。

玉生貴嗣さん
広島で3年間住み込みで修業して帰ってきたときには、能登杜氏さんが弊社に住み込みで玉旭のお酒をつくってくださったんですね。

代々、能登杜氏組合の杜氏さんが玉旭をつくってくださり、私が帰ってきたときも、その杜氏さんの下で見習いをさせてもらった経緯がある上に、今の弊社の杜氏も能登杜氏さんに育ててもらったという、ご縁とご恩があって。

この地震で被災されてる能登を「お酒を通じて少しでもご支援できないかな」というところと、日本全国に日本酒ファンが多くいらっしゃる中で「能登や富山で地震被害にあわれた方々に何か支援したいけど、どうしたらいいかわからない」という方が多くいらっしゃると思ったんですね。

アッティ
おっしゃる通り。

玉生貴嗣さん
「何か手助けしたいな」と思って、玉旭の大吟醸に「復興支援大吟醸ラベル」を貼って。

1本2,310円するんですけど「お買い上げいただいたら、能登石川県酒造組合と富山県酒造組合に全額寄付する」という支援活動をさせていただきました。

アッティ
売上全額ですか!? すごい!

あっという間に完売だったんじゃないですか?

玉生貴嗣さん
そうですね、694本。

アッティ
実はですね、アッティも飲まさせていただきました。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます!

アッティ
すごいさっぱりした美味しいお酒で、ましてや味だけじゃなくて、やっぱり想いが伝わってくる。

美味しさもそうですし、味わいをものすごい感じましたよね。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます!

このように「すぐ取り組もう」って思ったのは、「勇気を出してちょっとずつやらんまいけ」って新聞広告を出された地元の先輩がいらっしゃいまして。

アッティ
なるほど、素敵な方ですね。

玉生貴嗣さん
はい。私も「酒蔵として何かできないかな」と思ったときに、日本酒ファンの方々の手助けということに繋がって、ひらめいて、すぐ取り組まさせていただきました。

イベント「TOYAMA SAKE日和」

要約

2024年8月24日に高岡テクノドームで開催予定のイベント「TOYAMA SAKE 日和」。

能登の復興支援と北陸新幹線延伸を記念し、富山県内のワイン、クラフトビール、ウイスキー、地酒を集めたイベントです。

アッティ
能登の復興に向けてイベントをされるということをお聞きしたんですが、告知を含めて少し説明いただけますか?

玉生貴嗣さん
2024年8月24日土曜日に、北陸新幹線が延伸になったお祝いと、奥能登のお酒を応援しようという企画です。

題しまして、この奥能登の酒蔵さんはもちろんのこと、この富山県内のワイン、クラフトビール、ウイスキー、もちろん私どもの富山の地酒、全てのお酒が揃うイベント「TOYAMA SAKE 日和」。

アッティ
場所はどちらでやられるんですか?

玉生貴嗣さん
高岡市の高岡テクノドームで開催させていただく予定となっております。

詳しくはホームページ等々がございますので、「SAKE 日和」で検索いただければと。

当日、高岡駅から無料のシャトルバスも運行する予定となっておりますので、多くの皆さんにご来場いただければ幸いです。

アッティ
「SAKE 日和」、8月24日開催ですね。

昼から夕方にかけて、高岡テクノドームで開催されるということで、ぜひ皆さんお越しいただきたいと思います。

それでは今回は以上とさせていただいて、次回は、これからの日本酒業界についてお話をいただきたいと思っております。

日本酒業界と玉旭酒造

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表。テーマ4

日本酒業界の現状と課題

要約

日本酒の消費量は昭和50年のピークから70%減少し、酒蔵数も7,000から1,400に減少しました。

しかし最近、特に若者を中心に日本酒ブームが起きており、飲食店の適切な提供方法 (温度管理、保管方法) が日本酒の魅力を引き出し、消費回復に貢献しています。

多様な選択肢や食文化の変化が消費減少の要因ですが、現在は回復傾向にあります。

アッティ
もう3回を終えて、一つ一つがもう面白すぎて、素敵なストーリーだらけですね。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。

アッティ
4回目も楽しみにしてきました!

この4回目につきましては、日本酒業界についてお話いただきたいなと。時代時代で日本酒ブーム、地酒ブーム、焼酎ブーム、ワインブームなどがあって、それぞれの消費量がどうとかよく言われるじゃないですか?

今の日本酒業界全体のことと、富山の地酒がどうかっていうこと、そこらへんについてお話いただけますか?

玉生貴嗣さん
全国の日本酒だけで見ると、日本酒の消費量は昭和50年あたりがピークでした。

そして今、それから約50年が経とうとしてるんですけど、ピークから30%を切るぐらい。

アッティ
70%ダウンですか? えぇ!? そんなに落ちてるんですか?

玉生貴嗣さん
その当時は今ほど、ワイン、焼酎、さまざまなリキュール、発泡酒などの他の選択肢がなかったというのもあります。

あとは食の多様性ですよね。昭和50年代は、みなさん和食をメインで召し上がっていたので、やっぱり和食には日本酒が合うということで、日本酒を召し上がってらっしゃったと思うんです。

でも今は、食の多様化が進み、アルコール飲料の多様化が進み、70%減ですね。

アッティ
70%減ということで、酒蔵さん自体も相当減ってるんですか?

玉生貴嗣さん
そうですね。その当時7,000蔵あったといわれてますが、平成になって2,500になり、今は1,400です。

アッティ
そんなに減ってるんですか!?

玉生貴嗣さん
1400蔵。

アッティ
これ、富山もやっぱりそうなんですよね? そのぐらい減ってるんですよね?

玉生貴嗣さん
そうですね。はい。

アッティ
減ったのは減ったとして、ただ皆さんが飲まれてないわけではないと思うんですけれども、ここ最近の日本酒自体はどうなんですか? 売れ行きというか、ブーム的なものって。

玉生貴嗣さん
コロナの影響もあったんですけど、ようやく、戻りつつありますね。

あとは、先ほどおっしゃられた日本酒ブームもちょっと起きてまして。

アッティ
今起きてるんですか、やっぱり?

玉生貴嗣さん
特に若い方が召し上がるようになりましたね。

アッティ
若い人?

玉生貴嗣さん
はい。

本当に感謝してるのが、飲食店さんが上手に、富山の地酒や日本酒を提供してくださってることです。

温かいお酒に向いてるお酒は、しっかりとした温度帯で提供してくださったり

アッティ
飲食店の方もすごい勉強されて、美味しく飲める状態を作ってくれてるってことなんですね。

玉生貴嗣さん
保管も上手ですし。

アッティ
そうですか。

玉生貴嗣さん
はい。その日本酒のためだけの冷蔵庫を設けてくださってたり。

その昔は、もう全て常温で、倉庫にあるのをそのままコップに入れてたのに。

アッティ
そうですよね。

玉生貴嗣さん
今はもう本当に、料飲店さんが勉強されて。

アッティ
なるほどなるほど。そういうこともあって若い人も飲むようになって、今、また少し伸び始めているという状況なんですね。

富山の日本酒の特徴

要約

富山県の日本酒は、全国でも5本の指に入る辛口が特徴。

特に「淡麗辛口」が多く、おつまみの味を邪魔せず引き立てる特性があります。この特徴は、控えめで聞き上手な富山の県民性とそっくり。

食事と調和する富山の日本酒の特性が、地元の飲酒文化と密接に結びついています。

アッティ
実はアッティ、かなり日本酒が好きなんですけど、もうほとんど富山県内の日本酒しか飲まないんですよ。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。

そういえば、富山県内の日本酒に特徴があるのをご存知ですか?

アッティ
難しいこと言われますね。

玉生貴嗣さん
まず、富山は、国内で5本の指に入る辛口の県なんです。

アッティ
そうなんですか?

玉生貴嗣さん
辛口が多い県。もちろん甘口のお酒もありますけど、平均したら5本の指に入るぐらい辛口を出す県です。

その辛口の中でも、「淡麗辛口」と呼ばれる分野のお酒づくりが盛んで。

アッティ
なるほどなるほど。

玉生貴嗣さん
この淡麗辛口の日本酒には、一緒に召し上がられるおつまみの、うま味、香りを邪魔せずに、うま味を引き出してくれる機能があるそうです。

アッティ
めちゃくちゃいいじゃないですか!

玉生貴嗣さん
富山の県民性を感じません? あまり出しゃばらない。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
出しゃばらず、聞き上手で引き立てるっていう。

アッティ
主役は食品でね。

玉生貴嗣さん
富山の県民性が表れる味わいが、酒づくりの味わいにも反映されてるんだなと思います。

アッティ
20数年ほど前に、いろんな県の、特に新潟とかいろんなところで美味しいお酒が急にブームで上がってきて、そのときはどちらかというと日本酒の味が強いイメージがあって、それはそれで美味しいなと思ってました。

でも富山の日本酒は確かに、おつまみと一緒に食べるとものすごい美味しいんですよね。

玉生貴嗣さん
さらにもう一つあるんです。

アッティ
えっ、もう一つですか?

富山県民の特徴

要約

富山県民は1人あたりのアルコール消費量が全国トップ10に入りますが、外食での飲酒支出は最下位。主に自宅で飲酒する傾向があり、惣菜購入量は全国2、3位です。

富山の惣菜や刺身の高品質さが、この傾向の要因の一つと考えられ、家庭での飲酒文化が富山の特徴として浮かび上がります。

玉生貴嗣さん
富山県民は、たくさんアルコールを飲むんです。

アッティ
富山県民がですか?

玉生貴嗣さん
全国でたくさんアルコール飲む、ベスト10には入りますね。

アッティ
ベスト10に入るんですか!?

玉生貴嗣さん
1人あたりの消費量です。

アッティ
1人あたりね。

玉生貴嗣さん
たくさんお酒を召し上がるんですが、外食で使われる出費はワースト1なんです。

アッティ
それは、お酒の出費ってことですか? 外では飲まない?

玉生貴嗣さん
外では飲まない。でも、お酒をたくさん召し上がられる。

「じゃあどこで召し上がってらっしゃるのか?」っていうと、ご自宅じゃないですか?

アッティ
自宅ですよね、普通ね。

玉生貴嗣さん
ここからは私の私見ですが、そこから見えるものがあります。

まず、富山県民は、お惣菜の購入量が全国2位、3位らしいです。

アッティ
惣菜を買う。

玉生貴嗣さん
お惣菜のクオリティが富山県は高い。もしくは、お料理上手…。

アッティ
なるほど、どっちかだ。

玉生貴嗣さん
料理上手な旦那さんがいらっしゃるか、料理上手でキレイな奥様がいらっしゃるか、亭主関白で「早く帰ってこい」っていう男性が多いのか、恐妻家が多いのか?

わかんないですけど、とにかくご自宅で召し上がるそうです。

アッティ
あと、やっぱりあれがあるんじゃないですか?

結局、スーパーとかいろんなとこ行ってますと、惣菜だけでなく刺身とかみんな美味しいじゃないですか? 普通にちょっと買ってきて、家でクッと飲みたいってなっちゃいますもんね。

玉生貴嗣さん
関東からいらした方がびっくりしますもんね、スーパーのお刺身コーナーを見て。

アッティ
確かにそうですよね。

なるほど、それが特徴なんですね。面白いです。

玉旭酒造の販売戦略

要約

玉生貴嗣さんは、酒蔵減少と消費量低下の中、海外展開を重視。「ECHOES」がシンガポールやパリのコンテストで受賞し、国際的認知度を高めました。

しかし単なる輸出量増加ではなく、日本酒を通じて日本への興味を喚起し、訪日のきっかけを作ることを目指し、地方への観光客増加にも貢献したいと考えています。

アッティ
全国的に酒蔵が減って、消費量もとてつもなく減っている現状がある。

こういった市場の中で、玉旭さんは、これからどういう武器を持ちながら戦っていくものですかね?

玉生貴嗣さん
「やっぱり輸出のことは無視できないな」と思ってまして。海外展開ですよね。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
ただし、ただただ海外に持っていって売れるかといったら、なかなか厳しい部分があります。

「日本酒を知ってもらうところからスタートしなきゃいけない」という壁があるので。「じゃあ、どうしたらいいか」というところで、海外のコンクールやコンテストにエントリーをしました。

アッティ
されたんですね。

玉生貴嗣さん
そこで、弊社の「玉旭ECHOES (エコーズ)」。酒母搾りから生まれる、甘み、うま味、酸味が共鳴してるから「ECHOES」という。

アッティ
あれ美味しいですよね、大好きです。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。「ECHOES」を、まずは「シンガポール酒チャレンジ2023」にエントリーさせていただいて、ゴールドメダルを受賞したりですね。

アッティ
素晴らしい!

玉生貴嗣さん
今年もパリで開かれた「酒蔵マスター (Kura Master) 2024」の純米酒部門でも、プラチナ賞を受賞させていただいたり。

アッティ
それも「ECHOES」で?

玉生貴嗣さん
はい。まずは認めていただいて、知ってもらって、輸出展開していければなと思ってます。

アッティ
日本酒は、皆さんどんどん海外に持ってかれていて、それはそれで通用してる雰囲気もあるようなイメージはありますね。

それこそ味はどうか知りませんが、日本じゃ全く名前が通っていない「そんなお酒でも通用してる」みたいなニュースも聞いたりしますし。

でも、そこって確実に競争が起きるわけじゃないですか? そのときは、賞を取っていてネームバリューがしっかり付いているのは大事ですしね。

そういう意味では、海外展開は面白いですね。これからも、どんどん進めていくんですかね?

玉生貴嗣さん
どんどん進めていきたいんですけど、そこでちょっと私自身が注意しなきゃというか、心がけてるところがあります。

ただただコンテストでゴールドメダルを受賞した、高評価をいただいたというだけじゃなく、出荷量や輸出量が増えただけでとどまらず、最終的な目標は、玉旭の日本酒を召し上がっていただいた海外の方が「このお酒、日本酒っていうのか。じゃあ日本に行ってみたいな」と。

アッティ
いいですね。

玉生貴嗣さん
「このお酒、日本で作られてるんだよな、日本に行ってみたいな、日本のどこに行ったらこのお酒をつくってる人に会えるんだ? つくってる人に会ってみたいな」

そこまでの感動とか、衝撃を与えられる輸出事業にしたいんですよ。

アッティ
いいですね。ものすごい、いいですよね。

今インバウンドの時代の中でよく言われるのは、外国人が来られます、東京はまず行きます、普通に観光します。でも2回目に来るときは、皆さん地方に行きたがられる。

玉旭の日本酒がきっかけになって、富山に来られる人が増えたり、富山を見て日本好きが増えたりするのは、素晴らしいですよね。その目標は素敵すぎますね。

玉生貴嗣さん
ありがとうございます。

アッティ
今回は以上とさせていただいて、次回はいよいよ最終回の5回目ということで、富山に対する想いとか、そういったお話をお聞きしたいと思います。

富山への想い&オススメ店&リクエスト曲

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表。テーマ5

ふるさと富山について

要約

玉生貴嗣さんは、富山を「米よし、水よし、お人よしの県」と表現。

環境省の名水百選で選ばれる箇所が全国一多く、酒米の質も高く、高品質な原料を使用しているのに、酒の価格を抑えている点を「お人よし」と評価しました。

アッティ
いよいよ最後の5回目になりました。

いつも皆さんに同じような話を聞いていくんですが、ぜひとも玉生さんの、ふるさと富山に対する想いをお聞かせいただきたいと思います。

玉生貴嗣さん
「米よし、水よし、お人よしの県」だな、っていうのが、私の一言で表現する富山です。

ついつい日本酒にたとえて表現しちゃうんですけど、「水よし、米よし、お人よし」。

アッティさん、知ってますか?

アッティ
なんですか?

玉生貴嗣さん
環境省が選定している「昭和の名水百選」とか「平成の名水百選」っていうのありますよね?

全国でナンバー1なんです。富山県が選ばれる箇所が。

アッティ
ナンバー1っていうのは?

玉生貴嗣さん
選ばれる場所の数が一番多いんです、富山が。

アッティ
そうなんですか!? 知らなかったです。

玉生貴嗣さん
あと、何で「米よし」っていうかと言いますと、日本酒づくりには、酒米が必要ですよね? その酒米にも「特定名称」っていう、良い酒米のランクがあるわけです。

アッティ
なるほどなるほど。普通の米でもあるじゃないですかね?

玉生貴嗣さん
そのランクが高いお米を使用している割合が、富山県の酒蔵がトップ3なんです、毎年。

アッティ
みんな、良いお米を使ってらっしゃるわけだ。

玉生貴嗣さん
でもお酒の値段は、全国であまり変わらずに。

アッティ
そんな高いってイメージはないですよね。

玉生貴嗣さん
良いお米、高いお米を使ってるのに、お酒の値段は上げずに据え置き。「お人よし」じゃないですか。

アッティ
「お人よし」ですよね (笑)

玉生貴嗣さん
「水よし、米よし、お人よしの県」って思ってます。

アッティ
なるほどなるほど。

玉生さんは学生時分に県外に行かれて、修行で広島にも行かれて、県外からの視点も持っておられますよね? 富山の風土や人柄などはどう思われます?

玉生貴嗣さん
人と人との繋がりがしっかりしてるというか「強い県だな」っていうのが、離れてみてわかりますね。

富山県内で大好きな飲食店

アッティ
玉生さんが、いろんな人との繋がりの中で特に繋がってらっしゃるのは、飲食店だと思います。

必ずゲストの方にお聞きしてますが、ちょっと玉生さん的に言いづらいかなとは思うんですが、お気に入りの飲食店ってどこかありますか?

玉生貴嗣さん
お気に入りの飲食店…

アッティ
必ず一つ、富山県内で選んでいただいてるんですけど。

玉生貴嗣さん
時間足りなくなっちゃいます、何十件も何百件もありますし。

アッティ
そうですよね (笑)

玉生貴嗣さん
あと個人的なわがままで申し訳ないんですけど、この放送でお伝えしちゃうと、そのお店が予約でいっぱいになっちゃうじゃないですか?

アッティ
(笑) それこそ日本酒のプロが「ここが大好きです」って言っちゃうと、いっぱい人が来ますからね。

玉生貴嗣さん
私がお気に入りということは、私が週に1回行ってるわけです。入れなくなっちゃう。それは避けたい (笑)

アッティ
(笑) やっぱりちょっとね、仕事柄なかなか言えませんね。

玉生貴嗣さん
そうですね。それでも気になる方は、玉旭酒造のインスタ、もしくはFacebookページをご覧いただければ。

アッティ
何が出てるんですか?

玉生貴嗣さん
旬のお魚に合わせた、玉旭の旬のお酒とのマッチメイクのお店リストが。

アッティ
お店のことも出てるんですね?

玉生貴嗣さん
営業時間とか場所とか。

アッティ
なるほど。

玉生貴嗣さん
ご検索いただければ。

アッティ
何十件何百件も出せますからね。それを見るようにいたします。

玉生貴嗣さん
よろしくお願いします。

リクエスト曲

【玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さん】玉旭酒造有限会社 代表

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